三室勇の「不定期刊ZUBORA」

2009年10月17日

コラム「風」 スキャンダルとメディア  三室勇

▼今年3月、小泉・竹中構造改革路線を実際に軌道に乗せ、郵政民営化など担当していた高橋洋一元財務官僚が窃盗容疑で捕まった。それも日帰り温泉施設の脱衣所で時計と財布を盗んだ疑いをかけられて、それが報道され、一瞬のうちに大学職などを失った。

▼最近刊行された『恐慌は日本の大チャンス 官僚が隠す75兆円を国民の手に』という本の序章で、その事件の顛末を本人が書いている。要はロッカーの先客の忘れ物をあとで届けようと思ったが、予約していたマッサージに行き、その最中に眠り込んで、届けることを失念してしまった。自分のミスには間違いないが、取る気などさらさらなかったというわけである。

▼当時のテレビニュースをyoutubeで確認してみた。女子アナは、高級時計ブルガリ、財布など約30万円の窃盗容疑と報じ、警察の話によるとと前置きして、容疑者は前から時計には興味があったと説明していた。ところが本人は、自分は時計になど全く興味などはないことを、繰り返し書いている。

▼この発覚は脱衣所の監視カメラだったが、警察で聴取されたとき、本人はマスコミに漏れるとまずいな、と感じたという。名の通った人間としてはあたりまえだろう。警察も外にはもらさないという。後で返すつもりだったと抗弁しても、なにか大人げないと感じたこともあっただろう。結局はいったんは自分のポケットに入れたわけだから、それを認めたわけだ。

▼結局、書類送検されると一斉にマスコミが報じた。なぜ一斉報道になったか。ここらあたりが謎である。ただ、『さらば!財務省』『霞ヶ関をぶっ壊せ』と威勢よく、官僚批判をしていたことが、気に入らない人たちがいたことは確かだ。

▼放送メディアは権力とむすびついている。総務省が許認可権をもっているからだ。ここらあたりを切り離さないと、いつも視聴者は鼻薬をかがされつづけることになる。

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2009年9月19日

コラム「風」 サイトカインストーム  三室勇

▼現在、新型インフルエンザで国内の死者が15人出ている。15人目は17日に横浜で亡くなった12歳の男児で未成年で最初の死亡例だった。男児は高熱を出し、心筋炎と診断され、入院中の検査でA型インフルエンザとわかった。男児は気管支喘息の持病があったが、死因は呼吸器ではなく、頭蓋内出血といわれている。

▼15日、沖縄で基礎疾患を持たない健常な24歳の女性が亡くなった。感染後重症化し、くも膜下出血を併発したことが死因だった。医師は肺炎の進行が早く、重症化したと印象を述べている。出血原因は不明と答えていた。

▼医師は次いで「これは想像だが、死亡した女性は、ばい菌やウイルスに対して体内で免疫反応が過剰に出る『サイトカインストーム』が起こり、白血球の減少や肝臓の機能低下などを引き起こしたのではないか。若い人ほど激しく反応するため、サイトカインストームが起こりやすいとされる」(沖縄タイムス、ネット版、18日)と語っている。

▼サイトカインストームとは何か。まずサイトカインとは細胞間の情報伝達物質である。一般に細胞の増殖、分化、死(アポトーシス)のゴーあるいはストップは周囲の細胞と密接な情報交換が行われている。その任務を果たしているのがサイトカインだ。情報伝達物質にはホルモンが知られているが、これは特定臓器から分泌され、血流に乗って遠路はるばる標的まで届くといった仕組みである。サイトカインは比較的局所で情報を交換しあい、特別な産生臓器はない。多くは免疫細胞から産生される。こうした細胞がわかったのは、30年ほど前のことである。現在、数百種類発見され、なお途上にある。

▼サイトカイン同士は相互に影響し合っており、複雑な相関性で成り立っている。新型ウイルスの増殖による炎症が起こると、さまざまなサイトカインが総動員されて、過剰反応を起こすのではないかと考えられている。これがサイトカインストーム(サイトカインの嵐)である。

▼新型インフルエンザには早い対応が必要である。抗ウイルス薬を疑いがあったら、すぐ使うことだ。イギリスでは、行政サイトがネットで問診し、診断する方法をとっている。インフルエンザと診断されると家族、友人が抗ウイルス薬をもらいに行き、患者に投与するといった簡便な方法がとられている。新政権も大胆な新型インフルエンザ対策を打ち出すべきではないか。

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2009年8月15日

コラム「風」 この曖昧さがたまらない!? 三室勇

今日の新聞一面の片隅に政府広報の囲み記事が載っている。「本日は、戦没者を追悼し平和を祈念する日です」。そう、今日は敗戦記念日。だから「平和祈念日」としたわけだ。真偽は不明だが...。しかし待てよ、戦没者とはだれをさすのか。

▼今日行われる「全国戦没者追悼式」について政府は、「先の大戦における全戦没者に対し、国を挙げて追悼の誠をささげるため、昭和57年4月13日の閣議決定「「戦没者を追悼し平和を祈念する日」について」(別添)に基づき、政府主催の下に、平成19年8月15日、日本武道館において全国戦没者追悼式を行います」と報道発表している。

▼先の大戦? 第二次世界大戦、太平洋戦争、大東亜戦争、アジア・太平洋戦争、いずれかを使うとその歴史観・戦争観が明らかになるために、曖昧にしているとしか思えない。

▼では、戦没者とはだれか。「先の大戦」で亡くなった旧大日本帝国軍人・軍属230万人と原爆・空襲などで亡くなった日本国民80万人をさすとしか思えない。政府は戦傷病者戦没者遺族等援護法を作り援護をしてきたからだ。その対象は旧大日本帝国軍人・軍属に対してだけだった。それも戦後、日本国籍を選択権なしに奪われた旧植民地の軍人・軍属には一切援護はなかった。

▼もうひとつ考えなければならないのは、アジア全域で日本侵攻による大量な戦争犠牲者が出ている。これは戦没者に含まれていない。アジアで2千万人の戦争犠牲者が出ている。

▼「戦没者」という言葉は曖昧な言葉だ。軍人軍属の戦死者・戦傷病死者、非戦闘員死者を含んでおり、識別すべきことではないのか。また「没する」という言葉は、日が没するごとく自然のごとき響きがあり、この言葉を心理的負担なしに使いやすくしている。米国は戦死をkilled in action(KIA)と表記する。

▼昔、毎日新聞にこんな短歌が紹介されていた。

戦没者といひかえしとき戦死者のするどき眸(まみ)はみえなくなりぬ  小池光

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2009年7月19日

コラム「風」コラムの筆法

▼新聞には2つの読み方があるという。まんべんなくすべてに目を通す人と、まずコラムを読んで、好きな記事を拾い読みする人、後者は女性に多いらしい。新聞のニュース記事が主食の料理とすると、コラムは箸休めのようなものかもしれない。口の中をさっぱりさせる酢の物のような。

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