2009年11月 6日
09年の肖像「シガーエフ氏」:片山通夫
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キルギス国立美術館の館長ユリスタンベク・シガーエフ氏にインタビューする機会を得た。キルギスという国をご存じだろうか?2008年の外務省データによると人口540万人の中央アジアの小国である。首都はビシュケク。旧ソ連邦の一員だったが1991年に独立したがCISの枠内にとどまっている。民族はキルギス人(64.9%)、ウズベク人(13.8%)、ロシア人(12.5%)、ダゲスタン人(1.1%)、ウクライナ人(1.0%)という比率だ。中央アジアの他の国々と同様、イスラム教の信者が多い(75%)。
さて、シガーエフ氏が今回来日したのは、アジア美術館会議に出席するためだ。この会議は2年に一度開催されている。今回キルギスは初めての出席となった。「キルギスという小さな国がこの会議に出席できたことが大きな成果だ」と言う。そしてキルギス国立美術館が従来から行ってきた「シルクロード展」が、この会議の構成国であるネパール、カンボジアスリランカなどの国の美術館が興味を示してくれたことも大きい成果だったようだ。
今回の来日で「世界的な不況下での美術館運営のむずかしさを共有した」とも話す。「不況の今こそ、文化・芸術に触れる必要がある」とも話す。
シガーエフ氏は旧ソ連のレニングラード(現ペテルブルグ)の芸術アカデミーで学んだキルギスで有名な画家である。最もお金に遠いところにあると思われる芸術家が美術館の館長というマネージメントを必要とする仕事には不向きではないのかと問うてみた。
「それはそうだが、美術館には3人の副館長がいる、彼らがそれぞれのエキスパートとして働いてくれているので、そう心配はしていない。例えば、私たちの美術館には修復をする技術を持った人がいない。それで文化大臣に直談判をして、若い人をモスクワで修復の勉強をさせるために送った。文化大臣も作品の修復が必要だと予算を出してくれた。これなども、私が画家で(修復の)必要を説いたからわかってくれらのだと思う」
シガーエフ氏は筆者が持っている写真集の中から戦争に関する写真を探していた。「どうして戦争の写真なのか」と聞いてみたら「私が今、シリーズで描いているテーマが『ファッシズム』なのだ。1916年、ロシアがまだ帝政ロシアだったことの話だが、我が国でロシア兵に100万人以上の人々が虐殺されたという大事件があった。この歴史は我が国の悲劇として残っている。当時、ロシア兵の難から逃れるためにウルムチへ多くの人が逃げた。ソ連邦時代、その歴史は闇の向こうにあった。独立した今、この事件に光を当てるべきだ。まず芸術家が声を上げる必要がある。そして私はそのテーマでシリーズを書いているので参考のために写真を探している」という。
「ピカソのゲルニカのように」だと少しはにかみながらこう締めくくった。
現在ロシアとの関係は良好である。
「だからこそなのだ」 シガーエフ氏は「だからこそ」と繰り返した。
2009年11月 6日 12:32
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