2009年10月 5日
書評「ろうそくデモを越えて」:片山通夫
米国産牛肉の輸入解禁をきっかけに始まった韓国のろうそくデモを中心に日韓21人の論者が書き下ろした書は、意外にも類書がない。日本でも大きく報道された韓国のろうそくデモだが、日本での本格的な分析は一冊もない。そういう意味では本書刊行の意義は大きい。
2008年6月には100万人が参加するまでになった。この運動を始めたのは中高校生だったから驚きだ。デモとはこれまで無縁だった家庭の主婦、若者などが加わり韓国の市民運動では新たな歴史を刻んだ。本書はデモの内実をさらに掘り下げ、新たな市民運動、新聞報道分析、労働運動、経済・民営化問題、過去史精算、識字運動、女性労働運動、平和・南北関係などがテーマで、現代韓国の課題を明らかにしている。367ページの大作だが、そのことは別に気にならないのだから、私の「韓国社会はどうなるのか」という問題意識を強さからか。
やがてろうそくデモは李明博政権の徹底的な弾圧を受けたが、韓国民衆が投げかけた問いとは何だったのか。この問いに各自が答える。「新たなアジェンダーに応えること」(希望製作所常任理事朴元淳弁護士)、「守旧新聞の実態に失望した普通の市民がリードする言論運動の芽生えと拡大」(孫錫春「ハンギョレ」コラムニスト)「、民衆の異議申し立ての新たなシンボルがクェンガリ(伝統的な鉦の一種)からキャンドルに」(高正子神戸大講師)「労働運動は新たな局面にある」(李春子「労働セアン」発行人)と韓国の民主主義が何を中心に据えているかが鮮明になる。デモの渦中歌にもなった大韓民国憲法精神である。いかなる状況にあっても主権者宣言をして困難に立ち向かう姿が浮き彫りになる。
めまぐるしく変化するいまの韓国を伝える方法として様々な手法(書き手)で編集されている。
当事者が語り(参与連帯活動家)、ジャーナリストが体当たりレポートしたり(ジャーナリスト角南圭祐)、複雑な極東安全保障の姿を朝鮮戦争以降から平易に説き起こす(写真家李時雨)。そして、南北関係を冷徹に事実だけ追うなかで現代の課題を明るみにする(ジャーナリスト李仁哲)。最後は編者文京洙が民主化以後(1987年)の民主化の課題をまとめる。
1年余の編集でまとまった本書は、日韓の民衆運動の交流が生み出した記念碑的作品でもあろう。韓国のシンクタンク希望製作所メンバーへの執筆依頼から回り始めたことから、希望製作所日本支部の「希望叢書」1としての刊行ともなった。
『ろうそくデモを越えて 韓国社会はどこに行くのか』川瀬俊治・文京洙編希望叢書1
東方出版刊、2940円 A5 368ページ
ISBN978-4-86249-147-3
2009年10月 5日 11:36
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