'."\n" ?> 片山通夫の「取材手帖」:書評「コバウおじさんを知っていますか」:片山通夫
片山通夫の「取材手帖」

2009年5月21日

書評「コバウおじさんを知っていますか」:片山通夫

 のっけから失礼だが、「漫画家の書いた本」を読むのは初めてのことだった。無論、麻生首相ほどにも漫画は読まない。著者にあってみて驚いた。流暢な日本語を操るチョン・インキョンという女性だった。日本での生活は10年だという。

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  韓国は戦後長い間、軍事政権が続いたことは周知の通りである。その前には日本が朝鮮半島全体を植民地にしていた。その軍事政権時代を通じて40年間に渡って「コバウおじさん」という新聞風刺マンガを描いていた著名な作家キム・ソンファンをテーマにした論文が本書である。論文というと堅苦しさが先にたつが、そんなことをまったく感じさせないところに著者の力量を見た。

「コバウおじさん」は軍事政権に対して痛烈な批判を、しかしやんわりと新聞で批判した。つまり、時の政権にとって煙い存在だった。作者のキム・ソンファンは体制からの批判や圧力に最後まで屈しなかった。著者、チョン・インキョンはその現代史を下敷きにキム・ソンファンの生き様を見事に描いている。

 なるほど、副題に「新聞漫画にみる韓国現代史」とある。我々は本書を通じて、あの「暗かった」軍事政権時代に市民から圧倒的な支持を得た「コバウおじさん」の見た、韓国現代史を知ることができる。マンガという表現手法を駆使して40年もの長期間、新聞で連載を続けたキム・ソンファンにも驚きを禁じえないが、その彼をテーマに論文(本書)を書き上げた著者の目の付け所に驚く。なぜなら、本書は論文であり、また「コバウおじさん」を日本人に紹介するという目的も、そして何よりも、韓国現代史を改めて知る機会を日本人に与えたという、いくつもの目的を見事に成し遂げた。
本書そのものが、まさに「韓国現代史」であり、今の日本人に対する韓国から、そして著者からのメッセージだからだ。
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著者紹介(写真)
 1973年韓国ソウル生まれ。1996年韓国・淑明女子大学史学科卒。1996年来日、日本語学校に学ぶ。2001年京都精華大学マンガ分野卒。2006年3月京都精華大学大学院博士課程卒。博士学位取得。現在、日本で漫画家として活動のかたわら精華大学で教鞭をとっている。
註:マンガ博士の学位は(おそらく)、世界で初めて著者が授与された。

著書紹介
タイトル「コバウおじさんを知っていますか」―新聞マンガに見る韓国現代史
 発行 株式会社 草の根出版会
    2006年9月6日
 価格 本体 2400円+税
 ISBN4-87648-239-X

2009年5月21日 11:31

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