本澤二郎の「日本の風景」(228)

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<6党首討論会>
 現役記者優先の日本記者クラブ主催の総選挙公示前日の6党首討論会が、8月17日午後2時間からクラブ10階の大ホールで開かれた。テレビ生中継なのでテレビ観戦でもよかったのだが、偶然抽選に当たったので会見場に足を運び直接、当事者の表情や仕草を見聞することにした。壇上に目をやると、自民の麻生と民主の鳩山が遊説日焼けしていた。共産の志位は青白いインテリ風である。皆緊張で顔が引きつっていたが、女性党首の社民の福島ひとり、にこやかな表情を終始会場に振り舞いていた。


 中央に隣り合わせた麻生と鳩山が、目を合わせることはほとんどなかった。それこそ、犬猿の仲という態度を、誰が見てもわかるようにとっていた。余裕を感じさせない両雄を見て取れた。白い歯がトレードマークの麻生は、ついぞ笑顔を見せなかった。民主中心の政権を前提にした質問が目立ち、自民党首の影が薄くなった会見となった。初めての40日選挙で、早くも疲れ切っている男性党首の表情も印象的だった。
<小泉政治の否定>
 小泉―竹中路線がこの4年間の自公政治であったわけだが、麻生が一部を評価した以外、各党首とも全面的に否定した。一体、4年前の熱気は何だったのか。この国の政治のありようが、改めて問われていた。先導役のマスコミも。現に、この日の夕刻前、自民党比例区候補の公認が発表されたが、小泉チルドレンの最優等生と小泉が辞任、大臣ポストまで与えて重用した猪口は、哀れにも出馬辞退を余儀なくされた。自民党の古賀選対は当選不可能な24位に格下げしたからだ。そこに意外性はなかった。郵政当選の刺客組は、4年後の現在、自民党の足を引っ張る、もっともイメージの悪い存在なのである。
 「自民党をぶっ壊す」と公言していた小泉の言う通り、あとわずかで麻生・自民党は滅ぶことになろうか。その後の収拾さえも気にならない永田町である。
<平和で社民、財界接近に共産が監視役>
 筆者は来月には、よりましな政権が誕生するとみている。どうしてかというと、民主党の右翼議員に対して、連立を組む社民党が監視役になるからである。この日の福島は「新政権は平和主義・平和外交を貫いて行く」との姿勢を繰り返し訴えて、鳩山の賛同を得ていた。
 自民党を補完した公明党は、この面で大失敗、無責任・無能ぶりを支持者に与え続けたが、社民党は同じ轍を踏まないというのである。アフガン派兵に釘を刺してゆく。沖縄など米軍基地の縮小にも力を入れていく可能性が高い。民主党極右グループとの対決が見ものになろう。
 「いいことは支援を惜しまない」という共産党の志位は、民主党のもう一つの弱点である財界との関係について、当然のことながら厳しい視線を投げかけて注目させた。「内政は財界寄り」の自公政権にはさせない、というのである。自公と一緒になって新政権の足を引っ張るだけの共産党ではないといいながら、しかし、財界に引きずられる時は対決してゆく。これもいいことである。事実上の「閣外協力」といっては語弊があるのかもしれないが、よりましな政権との同党の認識を際立たせることになった。
<財政再建論回避>
 6党首討論会の限界は何か。あえていうと、日本沈没の元凶は財政が破たん、借金地獄に尽きる。金がないために何もできない、政策的余裕がまるでない。欧米に比べてもはるかに悪い状況にある日本である。それこそ最悪の財政事情にある。従って借金を減らすことをしていかないと、今後20年、30年、50年経っても国際社会に這い上がることはできない。日は昇ることがないのだ。
 財政を健全化させることが、日本にとって何よりも先決課題なのだ。脂肪分だらけの組織・人件費にメスを入れる行財政改革が必要不可欠である。民主党のいう単なる無駄で解決できるものではない。これに成功しないと、円に羽が生えて飛んで行ってしまう。既に年金も健保もガタついてしまっている。大変な場面に立たされている日本なのである。
 これの解決なくして日本の福祉も経済も再生することはない。苦しくても20年、30年かかっても健全財政はやりぬかねばならない。孫や子供の世代の借金を軽くするために、行財政改革は避けては通れないのだ。普通の為政者であればそうするだろう。果たせるかな、6党首からこれへの道筋を示す言及はなかった。不可解・不思議な無力・無責任政党ばかりなのである。将来への展望を開こうとしないのだから、沈む太陽の日本に変化は起きてこないだろう。
 政権交代は必然だが、それでもって日本再生に進むかどうかは、はっきりしないどころか沈没へとさらに傾く。
<イラク戦争総括>
 アメリカのオバマはイラク戦争を批判して政権を奪取した。「麻生さんは、イラク戦争をどう総括するのか」という質問が出たことに、まず筆者は感心した。これまで、この種の質問が現役の記者から飛び出すことはなかったからである。
 小泉内閣の外交に関与してきた麻生である。総括できるわけがない。反省すれば立派だが、そんな度量は麻生になかった。「国際社会から評価されている」という自己弁護・詭弁で逃げた。お粗末元外相である。とてもオバマと肩を並べる資格などない。あとわずかな命であることを認めたようなものである。
<郵政民営化総括>
 小泉内閣以降の重大失政というと、憲法違反の派兵と一連の郵政民営化・規制緩和政策である。後者については、福田内閣が人事面で民営化反対派を重用して民営化そのものにNOを突きつけた。麻生内閣はどうなのか。同じことが言えるのだが、具体的な言葉でどこまで批判できるのか。彼は郵便事業の利便性と経営効率にプラス面があったとして小泉をかばって見せた。ただし、派遣法の強行など財界向けの規制緩和政策においては「ひずみが出た」と正直に答えた。「地域間格差、企業間格差、教育の格差は率直に認める」と言って、こちらでは小泉政治を否定してみせた。
<7条解散は間違い>
 国民新党の綿貫の一言が気になった。というのは「7条解散は許されない。これは天皇親政の名残である」と正論を吐いたからだ。憲法の7条解散は文言からも無理である。「戦前の天皇親政」を引きずっているというのだ。政府の都合で解散することは憲法上、疑義がある。彼は解散論ではまともな認識を示したが、同じく政教分離の観点からの、無宗教の国立追悼施設の建設には、神官の立場としてか反対した。神社・神主の世界は庶民には理解できないことばかりである。
 ご都合主義の憲法論では、大衆の支持を集めることはできない。「靖国参拝をしない」という鳩山は、むろん前向きの姿勢を見せた。討論会は、6党首が自由に相手に質問をぶつける形で進行したのだが、今回は鳩山への質問が集中した。政権交代を前提としていたからである。用済みの麻生を印象付けていた。
<財界と民主党>
 たとえば志位は、いつもなら麻生に質問するところだが、真っ先に鳩山に矛先を向けた。「財界主導の自公政権と決別できるのか」といって麻生を無視した。鳩山は「大事なことは官僚任せではなく、政治が主導権を握ることだ」とやり返した。
 企業献金廃止では鳩山から前向き答弁を引き出すと、日米FTA問題を取り上げた。
このFTA問題は財界が民主党に提示したリトマス試験紙とみられている。志位は「第2自民党化は許さない」と釘を刺したのであろう。
<非核3原則法制化>
 福島は非核3原則の法制化を鳩山に正した。
 「オバマが新しい時代を切り開いている。核廃絶を叫んでいる。こうした中で日本として非核3原則を法制化すべきではないのか」と連立相手の鳩山に攻め寄った。「これまでは国是のほうが強いと思っていたが、今後は法制化に努力したい」と連立相手に前向き発言をした。
<軍事費削減の声>
 日本財政は身動きできないほど悪化している。
 麻生はバラマキ公約の民主党に対して「財源はどうなのか」と切りこんで、同党のイメージダウンに必死だった。他方、後期高齢者医療制度の廃止を公約する志位は「これを撤廃してその財源は軍事費などのから生み出す」と発言した。
 福島も「労働者派遣法を廃止したい。財源は防衛予算の見直しで対応できる」と公約した。中曽根バブル期から世界第2位の軍事費大国に風穴が開くのかどうか、これも大いに注目される。
 早くも東京に新しい時代の風が吹いていることを感じさせる6党首討論会だった。
2009年8月18日記

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このページは、webmasterが2009年8月19日 10:31に書いたブログ記事です。

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