<8・15の東京>
戦後64年目の8月15日の我が家は、主の待つ自宅に息子と一人の孫が集まった。なごやかに夕食をとっていると、多摩川方向で花火大会をしているのが見えた。すると妻が60年近い前の昔話を始めた。「多摩川の花火大会には、父と姉の3人そろって田園調布の2階屋の友人宅に行き見物したもの。帰りに蒲田まで足を延ばして喫茶店に入り、その後に下丸子の自宅に戻った。また自宅の2階で父の東宝映画関係者を招いて、酒盛りすることもあった」などと。田舎育ちの筆者は、当時喫茶店さえ知らなかった。8歳になる孫は、毎年のように隅田川の花火を見ているものだから、遠方の花火にほとんど関心を示さなかった。
東京での8・15をほとんど経験していない筆者は、下町の商店の大半が夏休みをとり、店を閉めているということを知った。15日は未明から車がよく走っていた。盆休みで田舎に帰った人たちが上京しているためだった。日曜日の16日を挟んで、17日から普段の東京に戻るのであろう。
<軽くなった靖国>
8・15というと、靖国神社参拝が報道の中心というのが、悲しい日本の姿である。今年は公示目前である。既に夫や息子を亡くした遺族の大半はいない。昔は相応の票を目当てにした自民党右派の参拝派が少なくなかったが、今年はどうだろうか。
報道によると、国会議員のそれは40余人足らずである。少ない。票にもならなくなった、という現実を裏付けていた。靖国の価値は軽くなっているのである。40余人の中には、例年であればテレビに顔が映る大物も少ない。地元での選挙運動を優先しているのであろう。靖国の価値はこの程度なのである。
小泉と安倍は仲良く参拝した。国会議員は公人である。憲法20条に違反している。マスコミは右翼を恐れているのか、憲法を読んでいないのか、不思議にもこれを指摘しない。右傾化の日本はマスコミを巻き込んでいる。
昨年、中国人の映画監督によって「靖国」が放映された。試写会を日本記者クラブで観賞したが、そこで靖国神社の神体が日本刀であることを暴露した。見事な成果に驚いたものだが、それよりも小泉がいうような「平和の社」ではなく、「戦いの社」だったことに腰を抜かしてしまった。天皇制と靖国は、右翼・改憲軍拡論の源流なのである。小泉や安倍は日本刀に向かって平和を祈念しているのだろうか。近代合理主義を当たり前のように受け入れている現代人にとって、靖国参拝なる行為は常識を越えていて理解不能である。逆に、そうだから不気味な怖さもあるのであろう。
他方、過去の不幸な歴史を押しつけられた側からすれば、再度の侵略を考えているものかと戸惑うのも当然だろう。せめて鳩ぐらいにできなかったものか。さらに、遊就館なる靖国歴史館のことである。過去を美化する歴史館が国際社会で問題になる、と指摘したのは、自民党きってのリベラル派・加藤紘一だった。筆者は取材や参拝でここを訪れたことがない。だが彼のこの一言で、日中国交回復を実現した大平正芳が、加藤を後継者にした理由がわかった気がした。
<もみじ饅頭と宮澤・宏池会>
昨夜、長男が広島から上京する友人を迎えに羽田空港に行った。戻ると、お土産にいただいた広島銘菓・もみじ饅頭を持参した。これにも懐かしさがこみ上げてきた。というのも、国会の宮澤事務所に出向くと、そこにもみじ饅頭があった。地元の支持者が持参したものを、筆者のような来客に出していたものである。
思えば宮澤周辺から靖国が話題になることはなかった。「宏池会を一言で言うとリベラル」と筆者のインタビューに答えた宮澤である。リベラル派は仰々しく天皇や靖国を話題にしない。常識が通用する自民党派閥だった。宮澤派が加藤派になって当然だったが、そのあと分裂、現在は古賀派である。
古賀は靖国参拝派の第一人者だから、もはや宏池会の伝統は消滅している。彼の場合、戦死した父親が靖国に合祀されているという。自宅に位牌があるだろうし、墓所もあろう。靖国にこだわる必要もないのだが、彼は少数派になった遺族会役員として参拝しているのだろうか。
一時、加藤を元の鞘に引き戻そうという動きがあったが、加藤が古賀を嫌って実現しなかった。教養の格差なのか、リベラル認識の落差なのか。二人の間に野中広務がいる。彼は靖国派ではないと思う。
今回の閣僚参拝は野田・消費者担当相ひとりだった。彼女は古賀と近い。彼女が後継した叔父の野田卯一は、確か岸に近い右派政治家だった。
長崎市での平和市長会議総会(8月8日)でデスコト国連総会議長は「核廃絶に日本は指導力発揮を」と叫ぶ一方、カトリック信者として原爆投下に謝罪した。日本の神社は、数々の侵略戦争に根底から加担したというのに、被害者にも国民にも謝罪していない。それどころか過去の過ちを正当化しているというのだから、お話にならない。
この機会に麻生家も強制労働の過去を有する。謝罪を薦めたい。
<厳しい韓国メディア>
昨日、韓国紙の論調をインターネットで見たのだが、民主党に対する厳しい見方が出ていたのに少々驚いた。自民党よりましな政党だとは受け止めていない。党内右翼に警戒していた。小沢の動向にも。朝日新聞も総理・閣僚の靖国参拝を憲法の20条違反としていたものが、ここへきて憲法違反という文言を削除している、と指摘する記事を書いていた。
民主党も第2自民党でしかないのか。確かに危うい点はその通りだが、日本沈没にした自民党の継続は許されない。民主党に期待をかけるしか日本の選択はない。よりましな政権のはずと期待するしか手はないのである。 2009年8月16日記
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