'."\n" ?> 今西富幸の「思考する読書」:コラム「風」 No9「『大阪人』について」:今西富幸
今西富幸の「思考する読書」

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2009年10月10日

コラム「風」 No9「『大阪人』について」:今西富幸

 今回は『大阪人』について書く。といっても、信号が変わる数秒前から横断歩道に一歩、足を踏み出してしまう大阪人特有の気質のことについてではない。わたくしことで恐縮だが、縁あってこの夏から記事を書かせてもらっている月刊誌のことだ。
 

 大阪市の外郭団体が発行する雑誌で、その存在は以前から耳にしていたのだが、これまで手に取って読んだことはなく、てっきり地元のグルメスポットを紹介するタウン誌だとばかり思っていた。それがとんでもない勘違いであることを、仕事を請け負って初めて自覚させられたという次第である。
 手前味噌ながら言わせていただくと、これはたいへんに面白い雑誌だ。毎回、大阪市のどこかを1箇所、特集エリアと決め、もちろん、老舗のグルメスポットも紹介するのだが、タウン誌と決定的に違うのは、店を商う人々の"来し方行く末"を簡潔に"物語化"しなければならないという点だろう。"簡潔に"というのがポイント。つまり単なる味の紹介で終わってはならないということであり、わたしはこれを勝手に「人生の異化作業」と呼んでいるのだが、それゆえに記事作成にあたっては相当高いハードルが求められることになる。
 ちなみに最新の11月号は「千日前・法善寺」特集。今回取材したうちの1軒が法善寺横丁のすぐそばにある洋食店「末廣軒」である。ここの名物「ハイシライス」は文字通り、思わず唸ってしまうくらいにうまかった。それはともかく、まず驚いたのは、現在店を切り盛りする3代目店主、末廣修二さんの義父、つまり2代目がなんと連合艦隊の司令官、山本五十六に従軍したコック長だったということ。
 さらにもう1軒、同じく法善寺横丁への参道「南地中筋」にある喫茶店「アラビヤコーヒー」の店主、高坂明郎さんの母親、峰子さんがなんと戦後、わが国にも一時期だけ存在した女子プロ野球の選手だったということだ。峰子さんは今年76歳。数年前、当時のメンバーに呼びかけ、「大阪シルバーシスターズ」という野球チームを結成し、いまでも週に1度、試合にも参加している。最近、英国ロイター通信の取材を受けたそうだ。
 詳しくは記事を読んでいただく以外にないが、まさに市井の人々によって歴史はつくられているのだということを実感した。そんなことを書いていたら、米国オバマ大統領のノーベル平和賞受賞のニュースが飛び込んできた。この件については次回に改めて書きたいと思うが、それにしても日本と違って、米国の懐ろの深さをこのニュースでもって思い知らされた気がする。いまの日本に欠けているのはまさに、この種のダイナミズムではなかろうか。

2009年10月10日 00:47

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